2012年2月27日月曜日

[Movie][映画鑑賞]ミックマック


黄色がかったフィルタ映像が、安心のジュネ印です。

主人公バジルはレンタルビデオ店で働く映画マニア。あるとき、店の前で発砲事件が発生し、流れ弾を受け、
頭に銃弾を残したまま生きることに。

レンタルビデオ店の職を失い、その日暮らしとなったが、スクラップ工場で暮らすホームレスの仲間にと誘われるバジル。新たな人生が始まるが、ある日、自分の頭の中の銃弾を作った会社と30年前に父を殺した地雷を製造した会社を発見する。

バジルは、仲間と共に、2つの軍事会社の悪徳社長に復讐することを誓う。

復讐といっても、完全にコメディで、手作り感満載のいたずら手法がとても良い。
その小ネタの数々が、絶妙にバカバカしくて何度も笑ってしまう。

例えば、
「悪徳社長を盗聴するために、家の屋根に登り暖炉の煙突に、マイクを垂らしヘッドフォンで聴き耳をたてる」
あるとか、
「悪徳社長への手紙を盗み出すために、瓶に入った水を郵便ポストに流し込み、手紙を浮かせる」とかを、
一生懸命に実行するバジルたちが、最高におもしろいのである。

最後はバジルの望む形で復讐を果たすのだが、その手法もまた「お茶目で」、「誰も傷つかず」、「ハートウォーミングな結末」となっている。

何度観ても楽しめる、とても良い作品。

作品情報
タイトル:ミックマック
公開年 :2010年9月4日(日本)
製作国 :フランス(2009年)
出演  :ダニー・ブーンほか
鑑賞媒体:DVD

2012年2月16日木曜日

[Movie][映画鑑賞]ドラゴンタトゥーの女


かなり激しい。残虐な匂いがする。
目を覆いたくなるシーンもいくつかある。覆わずに済んだのは、監督のさじ加減がよかったからなのか。感覚が麻痺していたのか。

ドラゴンタトゥーの女はスリラーだ。しかも、デヴィッド・フィンチャーが撮る、飛びきりのスリラーである。

ファイトクラブ以来の魅力的なキャラクタ付きの物件とあれば、観ないわけにはいかない。

「ミレニアム紙の記者ミカエルは、大物実業家の不正を告発するが裁判に敗れ、意気消沈。
そんなミカエルに大企業の元会長ヘンリック・バンゲルが接近し、ある仕事を依頼する。それは、40年前にバンゲル一族が住む島から失踪した少女ハリエット事件調査だった。調査は難航するが、粘り強く新たな手がかりを見つけていくミカエルは、背中にタトゥーを持つハッカーリスベットと共に事件の真相に迫っていく。」



ルーニー・マーラは、不安定で神経質で過激な性質を持ち合わせたリスベットを好演している。

自分をレイプした福祉担当のおっさんに復讐するシーンのような激情の顔と、淡々と黙々と調査し続ける分析家の顔。この2面性がとてもバランスよく演じ分けられていることにより、リスベットの印象がとても複雑になる。嫌悪だけでも、同情だけでも、共感だけでもない、何とも言えない視線を向けることになった。

単純な善悪で切り分けられないキャラクタほど魅力的な存在はない。改めてそう感じた。

もちろん、ダニエル・クレイグ演じる良識あるミカエルの存在も大きい。007のイメージがあるにも関わらず、スパイ技で何とかしてしまう感が全くなく、鋭い洞察で真実に迫る(迫りすぎてやばい目に遭うわけで)姿は、新鮮だった。

ただし、キャラクタが魅力的なわりに、事件の結末は印象が薄かったかな。凄惨だけれども、ありそうという感じ。ミカエルとしては、ハッピーエンドで、リスベットとしてはバッドエンドなのかな。

あぁ、またキャラクタに戻ってきた。つまるところキャラクタ映画ということなのだろう。
フィンチャーもすごく丁寧にキャラクタを配している。

そのほか印象に残ったのは、映像の中で随所に置かれた写真。事件の真相解明に写真が大きな役割を果たすとあって、写真の使い方、表現(誰がキーとなる写真か)は、とても細部まで計算されていて、ゾクゾクした。

案内によると本編は160分の長編らしいが、展開に夢中であっという間に観終わった。
最後まで観客を引っ張っていく力は十分にある作品。
ぜひ、次回作も撮って欲しい。

その前に原作読むか。

2012年2月12日日曜日

[演劇鑑賞]うるう by 小林賢太郎



小林賢太郎の作るお話は、大半シュールで、少しバカバカしくて、時々まじめ。


たまに思いが強すぎて、深すぎて伝わらないこともあるけれど、今作は誰が観ても楽しめる普遍さがある、夢がある。

「うるうびと」、それはうるう年のうるう日のように、どこでも、誰と何をしても、1人余ってしまう世界から取り残された存在。彼はつながりを諦め、人知れず森に暮らす。1人でいることが宿命だと考えて。


あるとき、彼が仕掛けた獲物取りの落とし穴に、1人の少年が落ちる。彼は少年を助ける。
少年は彼に興味を持ち、友達になりたいという。彼は困惑する。自分は1人だ、寂しくなんかないと。


はじめは、「少年マジル」を遠ざけようとしていた「うるうびと」が、少年と話し、少年を知り、心を動かされ、自分について語り出す。しかし、彼には1人で生きざるを得ない秘密があった。

そんな、一見よくあるような物語が、小林賢太郎の独特の調子によって展開していく。(特にドクダミの件はとても笑わせてもらった。)

でも「うるうびと」が自分の過去を語り出し、「少年マジル」に秘密を告げようとするあたりから、急激に物語はシリアスな展開をみせる。目を離せなくなる。こみ上げてくる。

そしてクライマックスは、、、

とても良い意味で期待を裏切られた。まさか、お芝居で涙をこらえることになるとは。


とにかく、生で観れて良かった。
気持ちよく劇場を後にした。
きっとDVDも買うな。


作品情報
タイトル:うるう
製作年 :日本(2012年)
作   :小林賢太郎
演出  :小林賢太郎
出演  :小林賢太郎
音楽  :徳澤青弦
会場  :天王洲銀河劇場

2012年2月8日水曜日

[Movie][映画鑑賞]100,000年後の安全

映画「100,000年後の安全」は、世界で初めて放射性廃棄物を恒久的に閉じ込める処分場を作るプロジェクトを描いたドキュメンタリー。

フィンランドにあるオンカロと呼ばれるその処分場は、地下500メートルの深さに達する。蟻の巣のように入り組みながら、その広大な領域に、フィンランドの原発から廃棄される今後100年分の放射性物質を格納する予定だ。
その後、放射性物質が無害となる100,000年後まで、オンカロは自立的(人間の手を必要としない)に稼働する。

放射性物質を100,000年もの間、誰にも触れさせず安定した環境で保全するのは相当に難しいことがわかる。
環境的要因だけ見ても安定した状態をつくりだせるものか、推測しかできないだろう。地震大国日本では、確実に無理だと感じる。

環境が整ったとして、皮肉にも閉じ込められた放射性物質を暴こうとするのは、人間だと想定されている。実際、この映画のコンセプトの1つは100,000年後の人間たちへの問いかけだ。

どれだけ、厳重にコンクリートで塗固めても、そこに”何か”がある限り、人間の好奇心は暴こうとするだろう。

どれだけ、その”何か”の危険性を訴えるすべを用意しても、100,000年後の人間に伝わるかはわからない。

非常に興味深いことに、放射性物質を閉じ込める知恵は、古代ピラミッドをつくるための知恵に相応しい。ピラミッドのそれは、王の遺骸と、そのまわりに納められた宝物を守るためだが、放射性物質が宝物にあたるとは考えたことがなかった。確かに未来人から見れば、お宝なのかもしれない。彼らは喜んで、研究対象と見なすのかもしれない。

100,000年もの期間、不確かな状況の中で、保全し続けなければいけない。
どれだけエネルギー効率が良かろうと、そんな”何か”を必要とする世の中は変えないといけないのだろう。

放射性物質を無害化する研究が、成功する未来があるかもしれないが、その逆も同じくあり得るのだから。

作品情報
タイトル:100,000年後の安全
公開年 :2011年4月2日(日本)
製作国 :デンマーク(2010年)
監督  :マイケル・マドセン